耳鼻咽喉科
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ご案内
■診療内容 | 耳鼻咽喉科は2名の常勤医師が病院の診療を担当しております。耳鼻科および内科の開業医や近隣病院からの紹介が多く、めまい・突発性難聴・顔面神経麻痺などの神経耳科学的疾患、慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎などの中耳疾患、慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎などの鼻疾患、口腔・咽喉頭の急性・慢性炎症疾患、頭頸部腫瘍、甲状腺・唾液腺疾患などの診察・検査・診断から治療までを行っています。 |
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■施設認定 | 日本耳鼻咽喉科学会専門医研修施設 |
■診療科の特徴 | 耳下腺腫瘍・側頚嚢胞手術に対し審美性に優れた手技〔facelift incision・retroauricular hairline incision (RAHI)〕 ~当院では、美容面に配慮した手技を取り入れた手術を行っています~ 耳下腺腫瘍・側頚嚢胞は顔面、頚部に腫瘤が存在します。通常の耳下腺腫瘍手術における切開は、耳前部から開始し耳垂をやや後方にまわり、頚部に伸ばすという、いわゆるS字状切開を行います。これをBlair incisionといいますが、顔面・頚部に切開痕が残るという欠点があります。 そこで当科では、2011年よりfacelift incisionという手技を用い、美容面に配慮した耳下腺腫瘍・側頚嚢胞手術を施行しています。 |
スタッフ紹介
役職等 | 名前 | 資格 |
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責任部長 | 糟谷 憲邦 | 日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医 日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門研修指導医 |
部長 | 原 思織 | 日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医 |
担当医師 | 松山 記子 | |
担当医師 | 金田 章真 | |
担当医師 (非常勤) |
角谷 寛 | |
担当医師 (非常勤) |
大江 祐一郎 | |
担当医師 (非常勤) |
松本 晃治 |
外来担当医表
外来担当医については、下記リンクをご参照ください。
休診、代診のお知らせについては、下記リンクをご参照ください。
学会・論文発表
学会・論文発表につきましては、下記リンクをご参照ください。
診療実績
(単位:件数)
手術 | 2023年 (1月~12月) |
2022年 (1月~12月) |
両側口蓋扁桃摘出術 | 36 | 31 |
内視鏡下鼻・副鼻腔手術 | 21 | 21 |
甲状腺片葉切除術・全摘手術 | 8 | 15 |
鼓室形成術・乳突削開術 | 9 | 23 |
耳下腺腫瘍摘出術 | 3 | 1 |
※2022年1月~2023年12月の期間の入院での手術件数を集計しています。
診療トピックス
甲状腺腫瘍について
■甲状腺について
甲状腺はホルモンを分泌する臓器です。代謝や体温を一定に保つエネルギー産生などをコントロールしています。場所は頸部正中ののどぼとけから鎖骨の高さまでの間に存在します。成人では約20g程度の小さな臓器です。
■甲状腺ホルモンについて
甲状腺ホルモンの役割は、細胞の新陳代謝を促進すること、摂取した食べ物をエネルギーに変え、この熱で体温を保持すること、また、子どもの発育や成長を促進することです。
ですから、甲状腺ホルモンが過剰になると、新陳代謝が亢進するため体重が減少し、頻脈や動悸、息切れ、多汗、下痢、落ち着きのなさなどの症状が起こります。
甲状腺ホルモンが不足すると、新陳代謝が低下するため体重が増加し、むくみ、徐脈、体温の低下、皮膚の乾燥、便秘、意欲の減退などの症状が起こります。
■甲状腺腫瘍について
原因不明であることが多いですが、甲状腺に腫瘍ができることがあります。症状に乏しく、頸部腫脹やのどの違和感が出る程度です。健診などで触診された際、頚部のしこりを指摘されることがあります。
基本的な検査は、甲状腺に関連した血液検査、頸部CT、超音波検査(エコー)と、超音波下に行う穿刺吸引細胞診です。この穿刺吸引細胞診は、腫瘍のごく一部ではありますが内部の細胞を直接採取して検査しますので、信頼性、診断率が高いことが特徴です。
良性腫瘍であれば、基本的に治療の必要はありませんが、悪性の疑いがある場合は、期間はあけても定期的に検査をしていきます。
甲状腺腫大は大きくびまん性甲状腺腫と結節性甲状腺腫の2つに分けられます。びまん性甲状腺腫は非腫瘍性甲状腺病変を言うことが多く、例えばバセドウ病や橋本病(慢性甲状腺炎)などがあげられます。結節性甲状腺腫はおおまかには甲状腺腫瘍に分類されます。
■甲状腺良性腫瘍
大きく腺腫と腺腫様甲状腺腫に分けられます。
腺腫には主に濾胞腺腫があります。
腺腫様甲状腺腫には甲状腺内に多数の結節と呼ばれるしこりがみられます。この内部に出血を伴ったり、嚢胞といわれる袋ができたりします。甲状腺は腫れていても厳密には腫瘍とは分類されないものです。
■甲状腺悪性腫瘍
甲状腺悪性腫瘍は大きく、乳頭癌・濾胞癌(分化癌)、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫に分けられます。好発年齢は30~50歳で女性に多く、一般的に甲状腺悪性腫瘍の予後は良好でおとなしい性質があります。化学療法や放射線治療は効果が弱く、最も根治性が高い治療は手術治療です。腫瘍の大きさや発生の程度によって甲状腺部分切除や全摘出を行い、頸部に転移している場合は頸部郭清術を追加します。
予後が良好でないものでは、腫瘍が神経に浸潤し反回神経麻痺を生じ嗄声(声がかれること)が起きる場合・気管に浸潤している場合・気管を圧迫して呼吸困難や飲み込みにくさが起きる場合、頸部リンパ節への転移が多発している場合、肺や骨など全身に転移している場合があります。
a. 乳頭癌:男女比は1:5と女性に多く、甲状腺悪性腫瘍の約80%はこの乳頭癌です。この腫瘍は10年の単位で徐々に大きくなり、ゆっくりとした進行を示すため、予後も5年生存率が約94%、10年生存率が約91%と生命に影響を及ぼすことが少ない癌です。また、乳頭癌と濾胞癌(分化癌)では発症が45歳未満であることも予後良好な因子となります。手術を中心とした治療を行います。もし分化癌で全身転移している場合は、甲状腺を体内からすべて摘出した後、放射性ヨード治療にて転移巣の治療を行うことがあります。
b. 濾胞癌:甲状腺悪性腫瘍の約10%にみられます。細胞診では良性腫瘍である濾胞腺腫との鑑別が困難なことがあります。血行性転移(肺や骨)が多いという特徴があり、予後は乳頭癌と同様に良好です。手術を中心とした治療を行います。
c. 髄様癌:甲状腺悪性腫瘍の約1%にみられます。傍濾胞細胞(C細胞)から発生し、カルシトニンというホルモンを過剰に分泌します。家族性(遺伝による)に発症し、褐色細胞腫・副甲状腺腫を合併します。進行は中等度です。手術を中心とした治療を行います。予後は甲状腺癌のなかで中間程度です。
d. 未分化癌:50歳以上に多く、甲状腺悪性腫瘍の約5%にみられます。悪性度が高いため局所への浸潤や全身転移がみられます。分化癌と比べ急速に増大するため、化学療法、放射線治療を優先して行います。
e. 悪性リンパ腫:50歳以上に多く、甲状腺悪性腫瘍の約4%にみられます。甲状腺内のリンパ球から発生します。橋本病の患者に発症することがあります。未分化癌ほどではないですが比較的急速に増大するため、治療は化学療法、放射線治療が中心となります。
どんな病気であろうとそれを治すためには早期発見、早期治療が重要です。一般的には進行がゆっくりな甲状腺悪性腫瘍でも、長期の経過にて病態が進行し、手術による体への負担が大きくなったり、合併症が起こりやすくなったりします。頚部のしこりがみつかったら、早めに検査をうけ、悪性の疑いがあれば医師の指示にて定期的に検査を受けてください。
急性中耳炎
中耳炎とは、鼓膜の内側にある中耳という場所に、細菌が感染し炎症をおこした状態をいいます。感染経路はほとんどが耳管からです。耳管とは、耳と鼻をつなぐ管のことをいいます。元々中耳のなかに細菌はいないのですが、風邪をひいた時などに、はな(鼻腔)やのど(上咽頭)の感染がおきると、耳管から中耳腔に細菌が侵入しやすくなります。幼少児は成人と比較して、耳管が短く、かつ内腔も広いため中耳炎にかかりやすくなっています。他に経外耳道性(鼓膜穿孔がある場合)や血行性のことなどもありますが、耳管から(経耳管性)に比べて頻度は少ないです。
症状は、耳の痛み(耳痛)、詰まった感じ(耳閉感)、聞こえにくさ(難聴)、耳だれ(耳漏)などがあります。幼少児の場合、耳をさわる、機嫌が悪い等の症状により気付かれる場合もあります。中耳炎の診断は、これらの症状と鼓膜所見とによりなされます。
治療は抗生物質の内服と点耳薬で、これによりほとんどが治癒します。炎症が強く、鼓膜が腫れている時は鼓膜切開により排膿することもあります。切った鼓膜は、ほとんどの場合自然にふさがります。
中耳炎の合併症として、
1)急性乳様突起炎:急性中耳炎の経過中、炎症が周囲の骨に波及し、起こります。高熱、耳後部圧痛、発赤がみられます。手術が必要になる場合もあります。
2)急性感音難聴:成人の場合中耳炎の経過中に、中耳のさらに奥にある内耳に炎症が波及し、難聴をきたし、ステロイドの点滴が必要になる場合があります。
3)滲出性中耳炎:中耳腔に水(浸出液)が貯留し難聴をきたします。
などが見られることがあり、注意が必要です。
慢性中耳炎について
■慢性中耳炎とは
中耳炎にかかったことはありますか。中耳炎と聞くと、子供がよくかかり夜中に激しい痛みを起こす病気だと思われる方も多いでしょう。これは急性中耳炎といって急激に炎症が起きたものです。一方、慢性中耳炎とは鼓膜に穴が開いてふさがらず、そこから膿(うみ)の耳だれがでてなかなか止まらない、聞こえも悪い状態をいいます。
耳の構造は、外側から外耳道、鼓膜、中耳、耳管となっており、さらに鼻とへ続いています。耳垢がたまりやすい通り道を外耳道といい、ここを入り口より2cm以上奥に進むと鼓膜にあたります。この薄い膜より内側は空洞となっていて中耳といいます。この空洞は閉鎖した空間ではなく、さらに奥に耳管という抜け道がのどの方向にのびており、出口が鼻の一番奥にあります。「息抜き」をしたときに鼻からの圧力で鼓膜がピクッと鳴るのはこのためです。
皆さんが風邪をひくと鼻やのどにバイ菌が入ります。バイ菌が増えて鼻の奥にまで進み、耳管を通り中耳に感染すると中耳炎を起こします。この急性の炎症によって中耳に膿がたまると、人の耳は鼓膜が破れることで膿を外に出して炎症を治そうとします。この鼓膜に開いた穴は、普通は炎症がおさまると自然に閉じます。しかし、中耳炎を何回もくり返したり治りきらないと、穴が開いたままとなり、中耳内は肉芽(にくげ)という炎症によってできたできものが慢性的に存在し、耳だれとなる膿を出すようになります。これを慢性中耳炎と言います。鼓膜に穴が開けば聞こえにくくなりますが、慢性中耳炎が長びくと、聴覚の神経までやられてさらに聞こえが悪くなってしまいます。小さい頃の中耳炎が治らず聞こえが悪いのに、「こんなものだ」と慢性中耳炎に気付かずに大人になってしまうこともあります。聴覚の神経は一度ダメージを受けると回復が難しいものです。
■治療
治療は、鼓室形成術という手術治療になります。新しく鼓膜を貼り付けて穴をふさぐこと、肉芽をそうじして中耳内をきれいな環境にすること、音の伝わりをになう耳小骨が溶けていた場合はこれを再建して伝わりを戻すことなどを行います。この治療によって耳だれが止まり、聞こえが改善することも多くみられます。
心当たりのある方は一度耳鼻科に相談されてはいかがでしょうか。
花粉症の予防と対策について
■花粉症とは
日本は2月から花粉症のシーズンが始まります。花粉症はスギやヒノキなどの花粉が抗原となって起こる季節性のアレルギー性鼻炎です。抗原物質が鼻腔粘膜に付着するとアレルギー反応を起こし、くしゃみ中枢、分泌腺、血管などに作用して、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが生じます。これら三大症状は、吸入された抗原を体内から追い出し、これ以上侵入させないという防御反応です。他にも、眼のかゆみを生じたり、仕事、勉学、家事、睡眠などの日常生活に支障をきたします。
■予防
花粉症のある方は毎日の花粉情報に注意し、花粉の飛散の多い時は窓を閉めておき外出をひかえること、もし外出する際はめがねやマスクで花粉を防ぐこと、服装は花粉がつきにくいものを着ることを心がけるといいでしょう。帰宅時は十分花粉を払い落としてから入室してください。
このように、眼や鼻内になるべく花粉が入らないようにすること、室内になるべく花粉を入れないことが大切です。
睡眠不足、ストレス、アルコールの飲みすぎなどは免疫機能を低下させ、症状を悪化させますので、これらを避けることも重要です。
■対策
予防をしても鼻水、鼻づまりがきつく日常生活に支障をきたす場合は、早めに耳鼻科受診をすることをお勧めします。シーズン中の症状を軽減させる方法として初期療法が重要です。2週間前からの内服投与が望ましいといわれており、初期治療をした人はそうでない人に比べ最盛期の症状が明らかに軽かった、ということが証明されています。
■治療
治療は抗アレルギー薬の内服やスプレーが一般的ですが、最近の薬は眠気などの副作用が少なく、効果は早くて持続時間が長いという特徴があり使いやすくなっています。
症状がひどく夜中に鼻づまりで睡眠に支障が出た場合は、まず部屋のそうじや空気清浄をする、マスクをする、入浴をし湯気を鼻から吸い込む、蒸しタオルを鼻にあて鼻を暖めると改善がみられることがありますので、一度試してみてください。
内服治療では効果が不十分で、毎年著しく日常生活に支障をきたす方には、レーザー治療が有効です。安全性が高く、日帰りで受けることができます。妊娠を考えているが花粉症のシーズンに期間が重なってしまう方(妊娠中の内服は禁忌となっています)、一年中アレルギー症状が続く方、受験生の方などもレーザー治療の対象になります。
以上のように、花粉症は早めの予防と対策が必要であることがおわかりになると思います。昨年も発症している方は早めの耳鼻科受診をお勧めします。
睡眠時呼吸障害(いびき、睡眠時無呼吸)
いびきが問題になる場合
第一は、騒音としてのいびきです。もっとも本人は眠っているので何の苦痛もないのですが、周囲の人に迷惑を与え(夫婦生活、子供の苦情、結婚を控えて、団体生活など)、ひいては本人の社会生活に影響を与えるものです。第二は、最近話題の睡眠時無呼吸症候群です。いびきがおこるのは上気道の狭窄によりますが、狭窄が強いと睡眠中に数十秒にも及ぶ無呼吸を繰り返します。このため、血液中の酸素濃度が低下、炭酸ガス濃度の上昇をきたし、ひいては肺循環、体循環の血圧上昇をもたらします。ひどい場合には急死することもあります。また夜十分に眠れないため、早朝に頭痛をきたしたり、目覚めが悪かったり、昼間に傾眠傾向になったりします。
いびきの原因
- 全身には肥満、狭頸、飲酒、過労などが挙げられます。
- 局所的には鼻副鼻腔、上咽頭疾患、中咽頭形態異常、喉頭疾患、小顎症、巨舌などがあります。
睡眠時無呼吸症候群(S1eep Apnea Syndrome; SAS)の定義
呼吸に伴う空気の流れが鼻あるいは口で、10秒以上停止した状態を無呼吸とし、この無呼吸を睡眠7時間中に30回以上認めるか、あるいは無呼吸指数(1時間当たりの無呼吸回数; Apnea Index)が5以上の場合を睡眠時無呼吸症候群と言います。
睡眠時無呼吸症候群の分類
(1)中枢性CSAS (centrral SAS): 呼吸中枢の活動の停止により、肋間筋、横隔膜の呼吸運動が消失する場合。器質的脳障がい者や循環器疾患の際に多くみられる。一般に脳幹の呼吸発振中枢の異常によるものと化学制御系の異常によるものに分けられる。
(2)末梢性OSAS(obstructive SAS): 胸郭と腹壁の呼吸運動は継続しているにもかかわらず、鼻と口の換気が停止しているもの。不定の周期で散発的あるいは連続して生じ、またその持続も一定していない。
(3)混合性MSAS(mixed SAS):上気道の狭窄や閉塞によって生じる機械的刺激によって引き起こされる反射性の無呼吸反応として中枢性の無呼吸が起こるが、その中枢型の無呼吸の終了する時点で上気道の閉塞がつづいている場合には中枢型の無呼吸から閉塞型の無呼吸と移行し、その結果として混合型の無呼吸となる。
睡眠時無呼吸症候群の症状
- 睡眠中の症状…無呼吸、いびき、過眠または不眠、異常行動
- 覚醒中の症状…昼間傾眠、起床時の頭痛、起床時の口内乾燥、咽頭痛、精神症状
- 合併症…高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など
いびき、睡眠時無呼吸症候群の検査
耳鼻咽喉科的な診察(鼻、口腔内、咽、喉頭)、体格(身長、体重)血液検査睡眠時の呼吸モニター(睡眠時ポリグラフ::睡眠時無呼吸症候群の診断、重症度を知る上で重要)いびきの音響分析(狭窄部位の診断に有用なこと有り)
治療
耳鼻咽喉科において治療の対象となるいびきは、上気道の閉塞によって引き起こされもので、基本的に手術治療が可能なものです。小児ではいびきのみではあまり治療の対象になりませんが、睡眠時無呼吸がある場合には、主にアデノイド切除や扁桃腺の摘出を行います。成人に対しては、扁桃腺摘出や強い鼻閉があれば鼻中隔矯正や粘膜下下鼻甲介切除などの鼻の手術も行います。また、中咽頭の狭小がみられれば、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を、舌根が大きければ下顎骨骨切り術や舌根部正中レーザー切除などを行う場合もあります。いびきだけが問題になる場合、症例によっては局部麻酔下の日帰り外来レーザー手術も可能です。保存的な治療としては減量、減酒、側臥位で寝るなど就寝時の姿勢の工夫などがあります。また、減量するまで無呼吸を防ぐため器械による補助呼吸(nasa1 CPAP)を使用することもあります。中枢性無呼吸症候群に対しての薬物治療としてプロゲステロン製剤、炭酸脱水酵素阻害剤、三環系抗うつ剤、トリプトファンなどを使用することもあります。
扁桃について
扁桃は口蓋扁桃、咽頭扁桃、舌扁桃、耳管扁桃からなり、他に咽頭側索、咽頭後壁リンパ小節と併せて咽頭の免疫機能を担っています。一般に扁桃腺と言われるのは、このうちの口蓋扁桃のことで、扁桃最大のリンパ組織となっています。
口蓋扁桃肥大
口蓋扁桃は通常3歳頃より生理的に肥大し、6~7歳でピークに達し、その後次第に縮小します。しかし、慢性炎症がある時は肥大が持続することがあります。高度扁桃肥大により、呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)、嚥下障害、構音障害が認められる場合は手術適応となりますが、症状がない場合は特に問題となりません。
急性扁桃炎
一般に、口蓋扁桃の細菌感染によっておこる急性炎症のことを言います。高熱とともに咽頭痛、嚥下痛を生じます。これらの症状がある場合、抗生物質投与が必要となるため、早めに受診するようにして下さい。稀に扁桃周囲炎、扁桃周囲腫瘍となり、更に開口障害(口が開きにくくなる)や摂食困難(飲み込めなくなる)をきたすことがあります。この場合、放置すると命に関わることがありますので、すぐに耳鼻咽喉科を受診するようにして下さい。
慢性扁桃炎
一般に急性扁桃炎の経過が遷延したもので咽頭異物感、口臭、せき、微熱扁桃病巣感染症(後述します)の原因となります。また、急性扁桃炎に反復して罹患する場合を習慣性扁桃炎と言います。普段よりうがいを励行し、規則正しい生活を送ることが重要ですが、年に3~5回以上急性扁桃炎を繰り返す場合は手術適応となります。自覚症状のないものは特に治療を必要としません。
扁桃病巣感染症
扁桃が原病巣となり、それ自体はほとんど無症状、あるいは時に症状を呈するといった程度に過ぎないのに、扁桃から離れた諸臓器に二次疾患を引き起こす病態をいいます。特に頻度が高いのが掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症およびIgA腎症で、これらは扁桃摘出術の有効性が極めて高いといわれています。前二者は、80~90%で症状の改善または消失、後者においても50~80%で尿蛋白や尿潜血の改善を認めると言われています。他にも尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病、慢性関節リウマチ、微熱、ベーチェット病などの疾患でも、上気道炎による症状の悪化や持続性の咽頭痛を伴う場合には比較的侵態の少ない扁桃摘出術を積極的に試みるべきと言われています。
メニエール病について
今から140年前にめまいが耳の病気から引き起こされることを初めて報告したのは、フランスの医師メニエールでした。これに由来し現在では、
- めまいを繰り返す
- 耳鳴、難聴が反復、消長する
- 同様の症状を起こす既に原因のわかった病気を除く
という3項目を満たすものがメニエール病と定義されています(注:1または2のない亜型もあり、後述)。また、剖検により病気の本態は内リンパ水腫(内耳にある内リンパ液が溜まりすぎた状態)ということがわかっています。しかし一般には、めまいを繰り返す疾患をメニエール症候群と呼んでいることも多く、この中には他疾患も含まれている可能性があり、先に述べたメニエール病とは必ずしも一致しない現状があります。
疫学
好発年齢は30-40歳、やや女性に多く、性格的には几帳面、内向的、悲観的、知識欲旺盛な人が多いとされます。有病率は10万人当たり約16人罹患側に左右差はなく、両側例が約30%あるとされています。
病因(まだ定かではない)
内耳の形態異常・機能異常説、自律神経系の緊張異常説、アレルギー説、免疫異常説、塩分・水分代謝異常説、ストレス説
症状
- めまい発作を反復する。めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度
- めまい発作に伴って難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状が変動する
- 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない
この様なめまい発作を繰り返す度に不可逆的な難聴、耳鳴が増悪するのが典型的メニエール病の経過です。
蝸牛型メニエール病:3症候のうちめまいのないもの(経過中に80%が典型的メニエール病に移行)
前庭型メニエール病:難聴、耳鳴のないメニエール病(典型的メニエール病移行は20%のみ)
両側メニエール病(重症メニエール病);高齢発症者に多い、罹病期間が長いほど多い、難聴の程度が高度、神経症的傾向が強い、予後不良である。
メニエール病の検査
典型例の診断は問診のみでも容易だが、初発例、非典型例の診断および経過の把握、重症化のチェックには耳鼻科的な聴力検査、めまいの検査が必須です。
- 聴力検査
中、低音障害型難聴(初期、典型例)、聴力の変動、補充現象陽性(大きな音がより大きく聴こえる現象:音が響いて聴こえるなど) - 平衡機能検査(めまい、平衡感覚の検査)
罹患側への転倒傾向、水平回旋混合性眼振、罹患耳の内耳障害 - 内リンパ水腫推定試験
グリセオールテスト(聴覚系)
フロセミドテスト(平衡神経系) - 電気生理学的検査
蝸電図検査 - 内耳造影MRI
治療
- 生活指導
めまい発作期は安静を保ち、めまいがおさまれば速やかに普通の生活に戻す。過労、睡眠不足、ストレスを避ける。喫煙、飲酒の制限。 - 好ましくない食品
塩分、水分の過剰摂取、カフェイン、アルコール、生成炭水化物 - 薬物治療
急性期:7%重曹水の注射、制吐剤、鎮静剤
間歇期:ビタミン剤、血管拡張剤、精神安定剤、浸透圧利尿剤、自律神経調節剤、抗ヒスタミン剤、ステロイドホルモン、漢方薬など - 鼓室内注入療法
ストレプトマイシンの注入 - 手術
保存的治療で治まらないめまいに対して行う。内リンパ嚢開放術(シャント手術)
前庭神経切断術(めまいの原因となる神経を切断)
味覚障害(味がおかしい)
最近「味がしなくなった」「食べ物の味がおかしい」といった味覚障害を訴える患者様が増えています。好発年齢は50~60歳をピークとし、高齢者に多いのですが、最近では若い年代にも多くみられます。
味覚は主に舌に存在する味蕾(みらい)という味覚受容器に味物質が結合し、この刺激が脳神経に伝えられることで感じられます。そのため味覚障害をひきおこす原因は障害部位によりいろいろで、舌の炎症、口腔内の乾燥、感冒などウィルス感染、頭部外傷、貧血などの全身疾患、ある種の中耳炎、腫瘍、神経疾患、においがしないことに起因する風味障害、心因性のものなどもあげられます。
主な原因は薬剤性、特発性(原因が検査で特定できない)、亜鉛欠乏性とされています。
亜鉛は味蕾を形成する成分のひとつで、これが不足すると味蕾が変性し、味覚障害が起こるとされています。薬剤性味覚障害は降圧剤、冠血管拡張剤、動脈硬化治療剤、解熱鎮痛剤、抗生剤、抗癌剤など多種多様の薬剤で起こり、特にいろいろな病気のために薬を内服している高齢者で増加しています。このうちの約半分は、薬物の作用により亜鉛が過剰に排泄されるためであると考えられています。
亜鉛欠乏性味覚障害は、最近特に食生活の問題(過度のダイエット、偏食、コンビニ弁当、インスタント、加工食品への依存)が指摘されています。若い世代の味覚障害はこれが主です。特発性味覚障害も潜在性に亜鉛が不足した状態が多くあるとされ、亜鉛に関与すると考えられる味覚障害は約7割あるという報告もあります。
治療としては原疾患の治療は勿論ですが、主に亜鉛製剤の内服を行います。また食生活の改善も大切で、亜鉛を多く含んだ食品(特に貝のカキ)を心がけて食べるようにします。また可能ならば原因と思われる薬剤を中止または他の薬剤に変更します。治療により3~6カ月で60~70%は改善しますが、障害が長くなるほど治りにくく、特に高齢者ではその傾向が強いので早期治療が必要です。
味覚障害でお困りの方、一度専門医にご相談下さい。