ご案内

神経内科のご案内
■診療内容  神経内科は脳、脊髄、末梢神経、筋肉の疾患を対象とする診療科です。
 代表的な疾患としては脳血管障害、パーキンソン病、アルツハイマー病をはじめとする認知症から末梢神経障害や筋疾患などがあります。
 パーキンソン病などのいわゆる神経難病はこれまで治療法があまりないといわれていましたが疾患によっては新しい治療法や治療薬が開発されております。
 また当院ではMRI・SPECTなどの画像検査や脳波、筋電図などの生理検査もおこなっております。
■施設認定 日本神経学会教育関連施設
■診療科の特徴  10名程度の一般病棟の患者さんに加え、回復期リハビリテーション病棟・療養病棟でも5~10名前後の入院患者さんの診療を継続し、1日約40~50名の外来患者さんの診療を行っています。土日祝日を除く、平日すべての曜日で外来診療を行っています(臨時の休診日あり、ご確認ください。)。また、脳外科と共同で時間体制の神経疾患救急医療を担当しています。
■患者さまへ  是非当院神経内科外来を必要時ご利用ください。初診時は必ず事前の予約をお願いします。外来受診時にはできるかぎり現在かかられている医師からの診療情報提供書を持参ください。また飲まれている薬があればお薬手帳など薬の内容が明らかになる書類等を持参いただきますようお願いいたします

 

スタッフ紹介

スタッフ紹介
役職等 名前 資格
責任部長 小川 雅文 日本神経内科学会神経内科専門医
日本内科学会認定内科医
担当医師
(非常勤)
戸島 麻耶 日本神経内科学会神経内科専門医
日本内科学会認定内科医
担当医師
(非常勤)
澤村 正典 日本神経内科学会神経内科専門医
日本内科学会認定内科医
担当医師
(非常勤)
上田 潤  
担当医師
(非常勤)
南山 素三雄 日本神経内科学会神経内科専門医
日本内科学会認定内科医

 

外来医担当表

 外来担当医については、下記リンクをご参照ください。

 休診、代診のお知らせについては、下記リンクをご参照ください。

診療トピックス

脳梗塞(のうこうそく)とその予防

脳梗塞とは

 脳卒中という病気の名前はどなたでも聞いたことがあると思います。脳卒中とは、脳の血管が裂けるか詰まるかして、頭痛、意識しょうがい、麻痺などの症状が突然起こる病気のことをいいます。脳卒中は現在でも日本人の死因の第2位を占め、また死に至らなくても後遺症を残し、その後不自由な生活を強いられることも多いため、社会的にも重要な病気と言えます。脳卒中のうちで、血管が裂けて脳の中に出血するものを「脳内出血」、脳の表面に出血するものを「クモ膜下出血」といいます。血管が詰まって、その血管から酸素や栄養をもらっている脳の部分が死んでしまうものを「脳梗塞」と呼びます。脳梗塞にならないための注意点をまとめてみます。

まだ脳梗塞になっていない方へ

 脳梗塞は40歳以上の中高年の方に多い病気です。「自分は大丈夫」と思っていても、何の前触れもなく突然起こるのが脳梗塞という病気の怖いところです。
 次の様な病気や習慣があると脳梗塞になりやすい(脳梗塞の危険因子)ので、今のうちにしっかり治療しましょう。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • コレステロールが高い
  • 尿酸値が高い、痛風もちである
  • たばこを吸う
  • 肥満
  • 不整脈(特に、心房細動)といわれている
  • 心臓の病気をしたことがある(特に、心筋梗塞、弁膜症、ペースメーカーの入っている方)

 高血圧や糖尿病、コレステロール、痛風などで薬をもらっている方はきちんと医師の指示通りに飲んでください。普段の食事にも注意しましょう。塩分は1日10グラムまでが望ましい摂取量です。日本人は平均12~13グラムの塩分摂取がありますので、気をつけないと過剰摂取になってしまいます。具体的にどういう食事がいいのか、ということは、栄養指導を受けていただくとよく分かりますし、外来にも簡単なパンフレットがおいてありますから、それを参考にされるとよいでしょう。お酒は、動脈硬化の観点から言えば少しなら構いません。1日に日本酒なら1合、ビールなら中びん1本までです。これ以上になるとやはり有害です。
たばこは百害あって一利なしです。肥満かどうかは、簡単な計算で判断できます。

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
 これが22くらいになるのがいわゆる標準体重で、標準体重の20%を越える(上の式の計算結果が26.4以上になる)と減量の必要な肥満といえます。

 心房細動という不整脈があると脳梗塞を起こしやすい、というのは明らかなのですが、この不整脈を持っている方全員に脳梗塞予防の薬が必要か、という点についてはまだ結論が出ていません。薬の副作用もあるので、まだ脳梗塞をおこしていない方については強い薬は使わずに様子をみることが多いようです。
心筋梗塞や弁膜症を持っている方、ペースメーカーの入っている方は、主治医からワーファリンなどの抗凝固薬を出されていることが多いでしょうから、それをきちんと飲んでください。

 一過性脳虚血発作(いっかせい・のうきょけつ・ほっさ)、こんな症状に心当たりはありませんか?-

 脳梗塞は何の前触れもなく起こる、と書きましたが、実は前触れがあることも時にあります。それが一過性脳虚血発作といわれる病気です。脳の血管が一時的に詰まり、血流がまた自然に再開することで、脳梗塞のような症状が短時間(数分~数時間)続くものです。勝手に症状が消えてしまいますので、「ちょっと疲れたせいかな」と放っておいてしまいがちですが、これは後に続く脳梗塞発症の警告ともいえる症状ですから、できるだけ早く必要な検査をして予防策をとる必要があります。次のような症状があった方は、例え短時間で症状が消えたとしても早めに受診してください。

  • 体の半身が麻痺した
  • 半身がしびれ、感覚が鈍くなった
  • 一時的に言葉が出なくなった
  • ろれつがまわりにくくなった
  • 片方の眼が一時的にみえなくなった

脳梗塞になってしまったら

まずはとにかく病院へ!

 皆さんは、突然ものすごく左胸が痛くなったらどうしますか?そう、すぐ救急車を呼んで病院に行きますね。これは、胸痛が心筋梗塞という怖い病気の症状かも知れない、と皆よく知っているからです。それに、痛みが我慢できないくらい激しいせいもあるでしょう。これに対し、脳梗塞の初期では痛みが全くなく、少し手足が動かしにくいという程度のことが多くあります。重症の脳梗塞ですと始めから意識しょうがいや強い麻痺が出るので、すぐ救急車で病院にこられますが、軽いものですとすぐ病院へ行かず様子をみてしまいがちです。すると翌日になって麻痺が強くなり、あわてて病院へ行ったけれども後遺症が残ってしまった、ということになります。脳梗塞は、早く適切な治療をすることにより、後遺症を軽くすることができますし、場合によっては全く後遺症なく回復することもあります。
 他の病気と一緒で、「早期発見、早期治療」が何より大切です。おかしいと思ったら、早めに専門医のいる病院へいらしてください。

脳梗塞の検査と治療

 脳梗塞と思われる患者様が来られると、まずは脳梗塞かどうかの診断のため、脳の断層写真の検査(CT)をします。発症して24時間以内の場合はCTを撮っても異常がないことがありますので、1~2日おいてもう1度検査します。より詳しい断層写真の検査として、磁気共鳴画像(MRI)も行います。また、脳の血管の状態をみるのにMR血管撮影(MRA)を行い、血管が細くなっているところがないか調べます。場合によっては、より詳しく血管の傷み具合をみるのに血管造影という検査が必要になります。さらに、脳の血流量をみる脳血流シンチグラム(SPECT)、心臓の状態を評価するために心エコー検査や心電図検査、コレステロール値や血糖値などをみるための血液検査を行い、脳梗塞の原因を突き止め、今後の治療方針を決定します。

 発症してまもない時期(急性期)は、点滴による治療が主になります。脳の血流を増やす薬や、脳の腫れを取る薬を点滴で使います。急性期を過ぎれば、飲み薬による再発予防と動脈硬化のもとになる病気(危険因子)の治療を始め、また後遺症が残ればリハビリテーションを行います。再発予防の薬には何種類かあり、脳梗塞の原因や血管の傷みの程度により使い分けます。場合によっては、再発予防のために手術が必要になることもあります。危険因子として最も重要な高血圧については、発症してあまり早い段階では治療しません。不用意に血圧を下げることで脳の血流が減り、脳梗塞が悪化することがあるからです。急性期をすぎても高い場合は血圧を下げる薬を飲みますが、この場合も緩やかに血圧を下げるようにします。普通血圧の正常は上が140、下が90以下ですが、脳梗塞後の患者様の場合、上は(年齢)+100程度、下は80~90程度が目標です。

脳梗塞の再発を防ぐための注意点

  • 食事は塩分控えめ(1日10g!-ふつう日本人は1日15-20gの塩分を摂っています。みそ汁は薄味に、めん類の汁は飲まない。
  • 栄養のバランスのとれた食事(カロリー過剰にならない、コレステロールを多く含む食品。例えば肉の脂身や卵などは控え、野菜や魚主体の食事を。)
  • 禁煙、節酒。
  • 水分を十分にとる(脱水は脳梗塞を誘発します。特に夏場、汗をかいたら必ず水分補給を。)
  • お風呂はぬるめで、長湯しない。
  • 急な温度変化を避ける(特に冬の夜のトイレやお風呂、これらに暖房器具をおくのも一法です。)
  • 毎日の軽い運動と、十分な休養、規則正しい生活を心がける。
  • 便秘しないよう、食物繊維の多い野菜を食べ、必要なら便を柔らかくする薬を使う。
  • 薬は指示された通り飲むこと。途中でやめては意味がありません。
  • 不幸にして後遺症が残ってしまった場合は、介護の方法や介護器具の購入・借用、介護施設の利用などについて、役場の福祉担当窓口で相談しましょう。身体しょうがい者手帳の交付を受ければ、公的補助が受けられます。

パーキンソン病の話(1)

 神経内科の病気の中に、脳や脊髄の神経細胞がだんだん少なくなっていってしまう変性疾患と呼ばれるものがあります。多くは原因不明で有効な治療法がなく、難病とされています。パーキンソン病も変性疾患のひとつで、やはり原因は不明ですが、有効な薬が何種類かあり、現在ではよくコントロールできる病気となっています。また比較的頻度の高い病気という点でも大事な病気です。

 パーキンソン病は50~70歳代で発病することが多く、高齢者の病気と言えます。ただ、20歳代で発病する若年性パーキンソン病もまれにあります。頻度は人口10万人に150~200人といわれています。500人に1人ですから、結構多い病気です。

 パーキンソン病の症状は特徴的で、典型的な患者様は初診のとき診察室に入ってこられて椅子に腰掛けるまでに診断の見当がついてしまいます。まず目立つのは震え(振戦)です。指で丸薬をこねるような震えが典型的ですが、脚や下顎にみられることもあります。何も動作をしていないときに震えて、何かしようとすると止まる、というのが特徴です。他に、動きが少なくなったり鈍くなったり(寡動)、他動的に関節を動かしたときにガクガクとした抵抗を感じたり(筋固縮)、立っているところを前や後ろに押した時に踏みとどまれずに倒れてしまったり(姿勢反射しょうがい)、というのがパーキンソン病と診断するうえで大事な症状です。顔の動きも少なくなり、お面をかぶったように表情がなくなる、脂ぎった顔になる、字や声も小さくなる、歩くときに最初の1歩が出にくい、逆に止まろうとするとすぐ止まれず前にとっとっと行ってしまい、極端な場合前のめりにこける、歩くときの手のふりが小さい、なども特徴的な症状です。他に便秘や立ちくらみ、よだれがこぼれる、気分の落ち込み(うつ状態)などがよくみられます。

 受け答えが鈍いので痴呆と間違われることもありますが、基本的には痴呆を合併することは少ないと考えられています。
パーキンソン病の場合、中脳の黒質と呼ばれる部分の神経細胞が減少しています。解剖して中脳の断面をみると黒い帯状に見える部分がありますが、これが黒質で、この部分の神経細胞はメラニンという黒色色素を含んでいます。パーキンソン病の患者様の脳を解剖すると、肉眼で見てもこの黒い部分が色あせているのが分かります。この神経細胞はドーパミンという物質を含んでおり、これが脳内で足りなくなるため上に述べたような症状が出ると考えられています。黒質というのは、目的とする運動をスムーズに成し遂げるため、いくつもの筋肉の動きを微妙に調節している錐体外路系というシステムの一部で、そのしょうがいで運動がぎこちなくなったり、余計な震えが出る、というわけです。黒質の神経細胞が正常の20%以下まで減ったときに初めて症状が出る、といわれています。

 なぜ黒質の神経細胞だけがなくなってしまうのか、はっきりした原因は分かっていませんが、パーキンソン病によく似た症状を引き起こす毒性物質の存在が知られています。アメリカの麻薬中毒の化学系の大学生が自分でヘロインに似た麻薬を合成して注射したところ、その中に混じっていたMPTPという物質のため重度のパーキンソン病類似の症状を呈し、解剖でもパーキンソン病と非常によく似た像が見られました。これがヒントになり、現在病因の研究が進められています。一般のパーキンソン病も、何らかの毒性物質が少しずつ慢性的に作用することにより発症するのではないか、というのが現在の仮説です。
上に挙げたような症状に心当たりのある方は、「動きが鈍いのは年のせい」と言わずに、一度神経内科の外来にいらしてみてください。

パーキンソン病の話(2)-薬について

(1)l(エル)-ドーパ

 パーキンソン病は脳内でドーパミンという神経伝達物質が足りなくなることで発症するため、このドーパミンを補充すれば症状が改善することになります。しかし、ドーパミンそのものを内服あるいは注射しても効きません。これは、脳という大事な器官に血液から何でもかんでも入り込まないようにバリアが保護しており(血液脳関門といいます)、ドーパミンはこのバリアを通過できず、脳内に移行しないからです。ドーパミンになる1つ手前のl-ドーパという物質を内服するとこのバリアを通って脳に入り、そこでドーパミンに変換されて効果を発揮します。現在パーキンソン病治療の中心的役割を果たしているのはこのl-ドーパ製剤です。ただ、l-ドーパは脳に入る前にも体中でドーパミンに変換され、副作用を生み、薬の効果も減弱します。そこで、脳以外の場所でl-ドーパがドーパミンに変換されないようにする薬(ドーパ脱炭酸酵素阻害剤といいます)を同時に併用します(現在は多くのl-ドーパ製剤がドーパ脱炭酸酵素阻害剤との合剤の形になっています)。

 現在使用されている薬としては、ネオドパストン、メネシット、イーシー・ドパール、ネオドパゾール、マドパーなどがあります。

 副作用としては、むかつき、食欲不振、吐き気などの消化器症状が主ですが、時に幻覚などの精神症状、狭心症、不整脈、立ちくらみ(起立性低血圧)などがみられます。また、口の周りが勝手にもぐもぐ動いたり、手足や体が余計に動いたり、といったような不随意運動がみられることもあります。消化器症状に対しては、吐き気止めを併用しながら、少量から開始するとだんだん慣れてくることが多いですし、食直後に飲むと副作用がでにくくなります。立ちくらみに対しては血圧を上げる薬を併用することもあります。その他の副作用に対しては、薬を減量あるいは中止する必要があります。精神症状があまり強いときはいわゆる向精神薬を使いますが、向精神薬の多くはパーキンソン病の症状を悪くしますので、注意が必要です。また、長期経過すると、薬の効果が短くなり、効果が切れたときに突然動きが悪くなったりすることがあります。このような場合、食後だけでなく起床直後や昼と夕の食間に薬を追加したり、次に紹介するドーパミン受容体刺激薬を併用したりします。

 この薬で特に大事なことは、急にやめないことです(これは、l-ドーパ以外の薬でも同様です)。急にやめると、反動で筋肉が著しく硬直し、高熱を発し、ひどいと腎不全から死に至る、悪性症候群という状態になる恐れがあります。体調が悪くて薬の服用が不規則になったり、夏場脱水気味になったりしたときに起こりやすいので、薬は必ず医師の指示通りに服用してください。また、パーキンソン病の治療を受けている方で熱が出た場合は、病院で医師の診察と血液検査等必要な検査を受けられることをおすすめします。

(2)ドーパミン受容体刺激薬

 黒質の神経細胞は、ドーパミンを神経伝達物質として大脳の奥深くにある線条体という部分に情報を伝えています。情報を受けとる線条体の神経細胞には、ドーパミンに対する受容体と呼ばれるものがあります。この受容体にドーパミンがくっついて線条体の神経細胞を興奮させることにより、黒質からの情報が線条体に伝わります。ここで、ドーパミン以外の物質でも受容体に結合して線条体の神経細胞を興奮させることができれば、脳内でのドーパミン不足を補うことができます。これがドーパミン受容体刺激薬と呼ばれる薬で、現在はパーロデル、ペルマックス、ドミン、カバサールといった薬が実用化されています。それぞれに特徴はありますが、基本的には同様の作用です。l-ドーパと併用することにより、l-ドーパの量を減らすことができ、上に述べた薬の効きが短くなるという弊害をある程度抑えることができます。また、これらの薬の中には、黒質の神経細胞の変性を抑える保護効果があるとされているものもあります。このようなことから、最近はl-ドーパを単独で使うより、l-ドーパとドーパミン受容体刺激薬を少量ずつ組み合わせて使うことが多くなっています。

 副作用としては消化器症状、精神症状、立ちくらみ、不随意運動など、l-ドーパとほぼ同様のものです.急にやめると悪性症候群をおこす恐れがあるのもl-ドーパと同様です。ドミンでは眠気が強く出ることがありますが、逆に不眠の方には好都合のこともあります。いずれにしても、これらの薬も少量から始めて症状に応じて患者様一人ひとりにとって適当な量を決めていく必要があります。

(3)ドーパミン放出促進薬

 生き残っている黒質神経細胞からのドーパミンの放出を促し、線条体への情報伝達をよくしよう、という薬です。病気が進むと生き残っている黒質神経細胞も少なくなってしまいますから、この薬は病初期の方の補助薬として使います。シンメトレルという薬がこれにあたります。もともとインフルエンザの薬として開発されたものですが、たまたまパーキンソン病に効くことがわかり、使われるようになりました。副作用は上の2種類の薬と同様で、消化器症状と精神症状が主です。

(4)抗コリン薬

 線条体では、黒質からドーパミンによって伝えられる情報と、線条体内部の神経細胞からアセチルコリンという物質によって伝えられる情報のバランスにより、運動のコントロールを行っています。パーキンソン病では、ドーパミンが不足することにより、相対的にアセチルコリンが優位な状態になっています。このアセチルコリンの作用を抑えることによりドーパミンとアセチルコリンのバランスをとり、パーキンソンの症状を改善する薬が抗コリン薬と呼ばれるものです。軽症のうちで、特に振戦が目立つ比較的若い方には有効な薬です。アーテン、パーキン、アキネトン、トリモール、ペントナ、コリンホールなどがあります。副作用としては、口が渇く、目がぼやける、便秘、尿が出にくくなるなどがあります。

 特に男性で前立腺肥大のある方は急に尿が出なくなったりすることもありますので注意が必要です。緑内障のある方は、この薬で急に悪くなることがありますので、禁忌になっています。また、高齢者の方では、痴呆が急に出てきたようにみえることがあります。薬をやめればもとに戻りますが、高齢の方には使いにくい薬ではあります。

(5)ノルエピネフリン作動薬

 パーキンソン病では、黒質の神経細胞だけでなく、ほかの神経系にも変性がみられることがわかってきました。特にノルエピネフリン(ノルアドレナリンともいいます)を神経伝達物質とする青斑核という部分のしょうがいですくみ足や立ちくらみ(起立性低血圧)、抑うつなどの症状が出るといわれています。このノルエピネフリンを脳内に補充するため、その前駆物質のドロキシドーパという薬が使われます(商品名;ドプス)。特になかなか最初の一歩が出ない、というすくみ足の症状がこの薬でよくなることがあり、l-ドーパ、ドーパミン受容体刺激薬などと併用して使います。精神症状、消化器症状の副作用はl-ドーパなどと同様です。血圧をあげる作用があり、起立性低血圧のある方にもよく使いますが、もともと血圧の高い方は注意が必要です。

(6)モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害剤

 諸外国では以前から使われていた薬ですが、我が国では昨年ようやく認可されました(商品名;エフピー)。ドーパミンが放出され、線条体の受容体に作用した後、MAO-Bによって分解されます。この薬はドーパミンの分解を抑え、放出されたドーパミンを長く受容体に作用させることによって脳内のドーパミン不足を補います。また、黒質神経細胞の保護作用もあるといわれています。現在は、l-ドーパの薬効が短くなった方などに対し、薬の効果を延長させ、l-ドーパの量を減らす目的で使います。副作用はl-ドーパなどと同様の消化器症状、精神症状、不随意運動などです。これはこの薬自体の副作用というより、l-ドーパの作用が増強されたことによる副作用であることが多く、これらの症状がみられたら、併用しているl-ドーパやドーパミン受容体刺激薬の方を減量します。

 また、ある種の抗うつ薬(3環系、セロトニン再取り込み阻害薬など)と併用すると、脳内でセロトニンという神経伝達物質が増加し、発熱、精神症状、悪寒、発汗、振戦、下痢などを呈するセロトニン症候群という状態になる恐れがありますので、併用しないようにします。

 パーキンソンの治療には上記の薬をその人の状態にあわせて、何種類か組み合わせて使います。症状に合わせて適宜薬の量を調節することも必要になってきます。しかし、薬だけでは十分な改善が得られないことがあり、その場合はリハビリも大事な治療手段になります。

パーキンソン病の話(3)-リハビリについて

 パーキンソン病の治療の柱は薬ですが、薬さえ飲んでいればいいというものでもありません。日々のリハビリで今ある機能を維持していくことも大事です。また、最近定位脳手術という方法による進行したパーキンソン病の外科的治療も注目されています。

リハビリテーション

 パーキンソン病は体の動きが少なくなる病気ですから、できるだけ体を動かしていくことが大切です。簡単な体操を1回10~20分、1日2~3回するようにしましょう。もちろんこれは目安ですから、時間の空いたときに、無理のない範囲でやれば十分です。自分のペースでゆっくりと、気持ちを楽にしてやりましょう。気乗りのしないときにむりにやっても効果は上がりません。

 運動の内容は簡単なもので構いません。神経内科の外来に自宅でできるリハビリの方法を紹介したパンフレットが用意してありますので、それを見ながら簡単なものから順にやっていけばいいでしょう。また、通院しながらリハビリも受けている方はそのやり方を覚えて自宅で時間のあるときにするようにしましょう。

 以下に、日常生活上での注意すべき点を挙げてみます。困ったときに試してみてください。

  1. 姿勢を正す
    パーキンソン病の方はどうしても前屈みの姿勢になりがちです。ときどき鏡をみて背筋が伸びているかどうか確かめましょう。背筋を伸ばす運動としては、背中とかかとを壁につけて立ち、肩甲骨と後頭部が壁につくようにする、あるいは壁に向かって10~20cm離れて立ち、両手をできるだけ高く伸ばして、手のひらを壁につける、といったものが効果的です。
  2. 動作時の震えをとめる
    パーキンソン病の震えはじっとしているときの震えが主体ですが、ときに動作をするときにもみられることがあります。はしやコップを持ったときにふるえたら、肘を脇につけ、上腕を固定した状態で必要な動作を行ってみて下さい。
  3. 歩行
    パーキンソン病では、だんだん歩幅が狭まって前のめりになってしまう小刻み歩行はよくみられる症状です。時には前へ突っ走ってしまう(前方突進)、逆に足が地面に張り付いたようになって動かなくなってしまう(すくみ足)などの症状がみられることがあります。こういった状態になったことに気づいたら、まず歩くのをやめて心を落ち着かせましょう。そして、かかとをしっかり地面につけ、ひざを伸ばしてまっすぐ立ち、両足を少し開いた姿勢をとります。
    このとき、後ろに反り返らないように注意しましょう。最初の一歩が出にくいときは、その場で足踏みをしてみる、片足を一歩後退させてから前へ振り出す、体を左右に揺らしてみる、などの方法を試してみてください。タイルの継ぎ目など、何か目標になる線を見定めて、それを踏み越えるようにすると足が出やすくなります。家の中でよく歩く部分(トイレや寝室までの廊下など)にビニールテープで歩幅に合わせて等間隔で目印をつけておくのもいい方法です。つえを使う人は、つえの先を「L」字型にして、つえの横棒の部分を踏み越えようにするといいことがあります。
    自分で「1、2」と号令をかける、周囲の人に手拍子をしてもらう、あるいは時計の刻む音に合わせて動くなど、何かの音でリズムをとるのも一法です。
    どの方法でも、必ずかかとから先に地面に下ろすことが大事です。つま先からつけると、前へつんのめってしまいます。一歩ごとに「かかと、かかと」と声を出して意識しましょう。方向転換もパーキンソン病の方には難しい動作の一つです。片足で回ったり、脚を交差させたりせず、半円を描くように歩いてUターンしましょう。狭いところでは特にやりづらいですから、ふだんから家の中を片づけて広いスペースを確保するのも大事なことです。
  4. 言葉の問題
    顔の筋肉がこわばって発音しにくい、声が小さくなる、だんだん早口になって聞き取りにくい、単調な話し方になる、話始めが声が出にくい、といった症状が出ることがあります。1日10分でもいいですから、声を出す練習をしましょう。心をリラックスさせ、口を大きく開けて「あー、いー、うー、えー、おー」と一語ずつはっきり発音してみましょう。自分では極端だと思うくらいに口を動かしてみてください。顔をしかめたりゆるめたり、頬を左右片方ずつふくらませたりといった顔の筋肉をほぐす運動をしましょう。声が小さくなったり、早口になったりする人は、意識的に一語ずつ区切って、はっきりと大きな声で話すようにしてみましょう。時計のチックタックという音のリズムにあわせるのもいい方法です。
  5. 嚥下(呑み込み)の問題
    のどの筋肉の動きが鈍くなると、うまく食べ物を呑み込めなくなり、むせたり、鼻の方へ逆流したり、よだれが垂れたりします。まずはのどの筋肉の動きをよくするために薬の調節をすることが大事ですが、少し工夫することで呑み込みやすくなることもあります。まず、姿勢が大事です。まっすぐ座っているでしょうか?呑み込みの時は、頭が後ろに反っていると気管に食べ物が入りやすいので、少しだけあごを引き気味にします。この姿勢で、よく噛んでください。冷たい氷水を一口飲むことで、嚥下反射がおこりやすくなります。コップ一杯の氷水を用意しておき、最初に一口飲んでみてください。これで呑み込みやすくなるようなら、食事の間そばにおいて、一口食べるごとに少しずつ氷水をのむようにしましょう。水が飲みにくい時は、氷のかけらをなめるのでもかまいません。いちばん呑み込みやすいのはゼリー状の食べ物です。いずれにしても呑み込みの問題は、肺炎や窒息など、直接命にかかわる事態にもなりかねませんから、よく医師に相談して下さい。
    よだれがいつも垂れて困るときは、頭を前に垂らさないようにして、唇を意識して固く閉じておくようにします。唇の間に木やプラスチックのへらのようなものを挟んでおくと、唇が閉じ、よだれが垂れないことが確認できます。

パーキンソン病の話(4)-手術について

 病期の進んだパーキンソン病で、薬が効きにくくなったり、薬による弊害が出ているような患者様を対象に、大脳基底核の一部を焼いて破壊する、あるいは刺激電極を埋め込んで必要に応じて電気刺激する、という手術が行われ、効果を上げています。手術をすれば完全になおる、というわけではなく、薬も引き続き服用しなければなりませんが、動きが悪かったり、薬の効きが短時間で切れたりして困っていた患者様が、かなりの程度不便がとれますので、適応を選べば有効な方法です。

 具体的には、寡動(動きが少なくなること)を主な症状とし、症状の日内変動があり、薬が有効で、言葉や呑み込みの問題がなく、尿失禁、痴呆のない方が適応になります。局所麻酔で目的とする部位に電極を入れるという手術ですので、比較的安全な手術ですが、やはり出血や術後の麻痺、嚥下しょうがいなどの合併症はあり得ます。また、目的とする部位にきちんと電極が当たっているかどうか、神経の電気活動をモニターしながらの手術になりますので、やはり十分な経験を積んでいる施設で行うべき治療ということになります。

末梢神経の病気-1

 神経内科は、脳の病気を扱うだけではなく、神経系全般の異常をあつかいます。

“末梢神経”と我々がよんでいる部分は、どこなのでしょうか?
“末梢神経”がしょうがいされるとどのような症状がでてくるのでしょう?
“末梢神経”がしょうがいされていることはどのような検査で分かるのでしょう?

末梢神経(まっしょうしんけい)とは?

 神経系は、脳や脊髄などの中枢神経筋肉等の体の器官と中枢神経をむすびつける末梢神経に分けられます。

  1. 末梢神経は、頭蓋骨(ずがいこつ)、椎骨で守られた脳や脊髄(中枢神経)とは区別される存在です。
  2. 末梢神経は脊髄をでて、手足の様々な筋肉に分布(運動神経の成分)していくと同時に、手足の感覚を脊髄を通して脳に伝える(感覚神経の成分)重要な電気信号のコードといえる存在です。
  3. この末梢神経は膨大な数があり、全身の隅々まで細い電線をのばして脳の指令を伝え、さらに脳に感覚の詳細な情報を送っています。
  4. いま電気信号のコードといいましたが、個々の末梢神経細胞は細い繊維のような尾をのばし、さらにその細胞の尾の束を、髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる絶縁体が覆った構造をもっているものがあります。まさに電線がビニールのコードをもっているのと似ています。

末梢神経の症状とは?

  1. 末梢神経がしょうがいされると、その神経の支配する筋肉が動かなくなり、その神経が関与する体表のしびれ、痛み、感覚しょうがいの症状がでてきます。
  2. 脳卒中などの脳の病気でもしびれ、運動しょうがいがでますが、その症状の分布からはっきり区別することができます。

 皆さんの中には、自分の腕をまくらにして一晩眠ってしまい、翌朝目がさめたときには手首が下垂して動かず、さらに手の甲がしびれて半日うごかなかったという経験のある人はいないでしょうか?これは、橈骨神経(とうこつしんけい)と呼ばれる神経が、腕の内側で上腕骨と頭で圧迫されるため一時的にその神経の伝導機能が悪くなったためおこるものです。羽目をはずしてお酒を飲んだ夜に起こるということで、“土曜の夜麻痺”などと呼ばれていましたが、今ではさしづめ“金曜の夜麻痺”でしょうか。この麻痺は同じような姿勢で眠らなければ、基本的にはすぐに神経は機能を回復して、症状もなくなっていしまいます。ただし同じような圧迫性神経しょうがいでもほうっておくと手遅れになってしまう病気もあります。(S)

末梢神経の検査-神経伝導検査

 手足の末梢神経の機能を調べるには神経伝導検査が必要です。これは、神経をいろいろな箇所で電気刺激をしてその伝わりをみる検査です。

 “神経を刺激する”といわれるととても痛そうな検査ですが、ほとんどの場合が体の表面から少しの間、電極をあてるだけの検査です。はじめて受けられる方は少しビリッとしてびっくりされるかもしれませんが、1本の神経を調べる検査時間は2~3分ほどです。

 この検査で調べると、先ほどの手根管症候群では、他の部分では正常なのに手首の手根管の部分でのみ神経伝導がしょうがいされており、診断がすぐにつくというわけです。この検査は手足のしびれや筋力低下があり、末梢神経の病気が疑われる人全てが対象となります。症状だけでは分からないしょうがいの部位と程度、種類から、病気の診断、治療効果の判定に大いに役にたちます。さらに糖尿病の患者様では、特にしびれや筋力低下のような症状がなくても、手足の先から神経の伝導しょうがいが進んでくることがあり、無症状でもチェックに必要な検査です。

 手足のしびれや脱力があり、頭部CTで検査をしてもらったが、特に異常はなく原因がよく分からないといわれた方はおられませんか?その方は末梢神経の病気かもしれません。当科では神経伝導速度検査をはじめとする神経機能の電気生理検査を毎日フル稼働させ、さらにベッドサイドにもポータブルの機械を使って、様々な原因でおこる末梢神経しょうがいに対応しています。

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